2011年12月20日火曜日

12月新刊のご紹介。

すみません! 年末進行のどたばたで更新が遅れてしまいました。ブルーバックスの公式メルマガからリンクで来ていただいた方は、先月の新刊案内のままなので「??」だったと思います。1日遅かった……。年の締めがこれでは情けないです、反省。来年は早め早めの更新でまいります。

というわけで、今月の新刊をご紹介させていただきます。


DVD-ROM付
地球から宇宙の果てへ

ビバマンボ 著
小久保英一郎 監修

宇宙の大きさがリアルに体感できる!
137億光年の彼方はどうなっているのか? 私たちが住む天の川銀河はどんな姿なのか? 誰もが「見たかった宇宙」を迫真の画像で描き出す、国立天文台の4次元デジタルビューワ「Mitaka」を、詳細な解説と名場面のスクリプトつきでDVD-ROMに収録! 地球から宇宙の果てまでの距離、スケールをPC画面上でリアルに体感してください。
未来はほんとうに大丈夫なのか?
井田徹治

2050年、世界の人口は92億人に達する!(国連人口部による2006年時点での推計)
転換を迫られる原子力中心のエネルギー政策、巨大市場化するインドと中国、ますます加速する低価格と大量消費で資源の枯渇はすでに現実の問題になっている。食糧は、エネルギーは、水は、レアメタルは……最新のデータで資源の未来を検証する。








物理の基本知識を問う「疑問中の疑問」
日本物理学会 編

答えられそうで答えに窮する極上の疑問集
高校生から寄せられた物理の疑問には物理の世界を理解する法則やエッセンスが溢れている。空が青く、夕日が赤いのはなぜ? といった、だれもが抱く疑問から、宇宙がはじまる前には何があったの? といった、専門家でもまだわからない疑問まで、結論にいたる方法に重きをおいて解説した物理の基本知識の集大成。






 

0℃~絶対零度で何が起こるか?低温工学・超電導学会 編

"永久気体"も凍りつく「極寒」の世界へようこそ!
凍った魚が蘇る「生体冷凍保存術」。最高の美味を極める「冷凍と解凍の科学」。本当は恐ろしい「低体温症」の話。無風なのに真横に煙がたなびく南極大陸の怪奇。ダークマターを捉える超ヘビー級の低温液体。電気抵抗がゼロになる「超電導」や、壁を這い上がる忍者液体「超流動」。氷点下をはるかに下回る世界で、なぜ「ふしぎ現象」が生じるのか、低温技術で何ができるかを網羅した「温度別」読む事典。

2011年11月15日火曜日

11月新刊のご紹介

 こんにちは。北から紅葉前線が南下してきて、編集部のある東京でも、街路樹が少しずつ色づいてきました。
 さて、ブルーバックス11月の新刊は4点。さっそくご紹介いたします。




確率から物理学へ

月路よなぎ マンガ

銀杏社 構成

ブルーバックスのベスト&ロングセラー、都筑卓司著『マックスウェルの悪魔』を漫画化!秘密の鍵はエントロピー。熱いお茶が冷めるのも、部屋が散らかってしまうのも、エントロピー増大が原因です。言葉だけは知っているエントロピー。分かったような、分からないようなエントロピー。この際、マンガで簡単に理解しましょう。




 
超光速粒子とメタ相対論
秋鹿さくら マンガ
銀杏社 構成

ブルーバックスのベスト&ロングセラー、都筑卓司著『タイムマシンの話』を漫画化!
タイムマシンの可能性はゼロではない! アインシュタインの相対性理論は、タイムマシンの可能性を残しています。それは、どのような原理なのでしょうか。過去を変えてしまうことは、できるのでしょうか? 「時間の不思議」にマンガで楽しく迫ります。





 
この世を支配する奇妙な法則
石川真之介 原作・漫画

不確定性原理と確率に支配された不思議な世界
位置と速さを同時に決められないという奇妙なルールがあると、ミクロの世界では何が起こるのか? 確率問題、トンネル効果、シュレディンガーの猫といった、日常では考えられない量子力学の摩訶不思議な世界を、カリフォルニア大学バークレー校の研究員がやさしく解説!


 





新世代旅客機を徹底比較青木謙知

「世界の両雄」の最新機種
ボーイング、エアバスの2大旅客機メーカーが21世紀に初めて出した新型機が787とA380。
両機はほぼ同時期に開発されたが、そのコンセプトは大きく異なる。787が燃費効率に優れた中型機なのに対し、A380は史上最大の超大型機。こうした基本的な方向性の違いから、製造に至る経緯、機体の性能まで、両機種を徹底分析。豊富な写真や図を用いて、わかりやすく解説した決定版。




2011年10月19日水曜日

10月新刊のご紹介

 ブルーバックス10月の新刊をご紹介します。今月から「マンガで読むブルーバックス」シリーズが始まります。1700タイトルを超えるブルーバックスの中から、ベストセラーや重要なテーマを扱ったものを選び出しマンガ化しています。マンガ版を読んでさらに興味が湧いたら、もとになった本へとさらに読み進んでいただければと思っています。

 と前置きはこれくらいにして、さっそく新刊5点を紹介します。



意図を正しく伝えるための16のルール

マンガ=カノウ 構成=銀杏社

ブルーバックスのベストセラー、
藤沢晃治著『「分かりやすい表現」の技術』を漫画化!
必ず役立つ、意図を正しく伝えるためのテクニックが満載。どんなプレゼンも完璧にこなせる、誤解を生まないレジュメが作れる……。そんな現代人の必須テクニックを、分かりやすく解説します。







状況判断力と決断力を磨くために

マンガ=がそんみほ 構成=銀杏社

ブルーバックスのベストセラー、
鍵本聡著『計算力を強くする』を漫画化!
計算で困ったことはありませんか? 計算が驚くほど速くなるテクニックをマンガで分かりやすく解説します。計算が速い人ほど、答えや結果を素速く予測できるので、決断が素速くできるようになる!






素数、完全数からゼータ関数まで

清水健一

幾多の未解決問題が待ち構える数学の秘境へ──
自分自身以外の約数の和がその数になっている「完全数」。単純な規則から驚きの数列が生まれる「フィボナッチ数」。「ピタゴラスの定理」と面積157の直角三角形の秘密。リーマン予想につながる「ゼータ関数」。2^2^n+1(2の2乗のn+1乗)の形をした「フェルマー数」は果たして素数を表すのか。大学入試問題を水先案内人にして、魅惑あふれる数論の世界に分け入る。




マウスに頼らないパソコンの動かし方

リブロワークス

時間のかかるマウス操作の大半はキーボードで実行できる!
パソコンの操作をマウスに頼り過ぎると無駄な手の動きが多くなり、時間がかかる。実はマウス操作の大半は、キーを押すだけのショートカットキーで実行でき、大幅な時間短縮が可能。本書では、Windows、Word、Excel、Webブラウザなど、パソコン全体に共通するショートカットキーを中心に、その使い方を丁寧に解説。ショートカットキーの連携も考慮しているので、連続する操作をキーだけで行うことも可能になる。





アメリカ最優秀教師が教える
はじめて学ぶ二大理論

スティーヴン・L・マンリー 著
スティーヴン・フォーニア 絵
吉田三知世 訳

現代物理学を築いた2つの理論をまとめて理解!
時間が遅れ、空間が歪み、物質は粒子であると同時に波でもあり──。一見奇妙でとっつきにくい現代物理学の考え方が、ユニークな登場人物たちの愉快な掛け合いで自然と理解できる。アメリカ最優秀物理学教師による型破りの入門書。


2011年10月12日水曜日

ブルーバックス新刊著者エッセイ デジタル化で変わるテレビ

ブルーバックス9月の新刊『図解 テレビの仕組み』著者のエッセイをご紹介します。
(講談社PR誌『本』10月号に掲載されたものを転載しました)




デジタル化で変わるテレビ

青木則夫(パナソニックエクセルテクノロジー株式会社代表取締役常務)


 二〇〇六年の日本アカデミー賞を総なめにした映画「ALWAYS三丁目の夕日」のなかに印象的なシーンがある。映画の舞台になっている東京下町の小さな自動車修理工場・鈴木オートの居間に初めてテレビが設置される場面である。時代設定は昭和三三(一九五八)年、下町からは建設中の「東京タワー」が見える。電気店から届けられたばかりのテレビの前で、皆がかたずを飲んで見守るなか、一家の主人が興奮を隠せない表情でテレビの電源を入れる。その時代を過ごした人は、思わずうなずいてしまう緊張と喜びのシーンである。
 日本のテレビ放送は、アメリカで開発された方式を採用して一九五三年に始まった。高度経済成長の波にも乗って一九五〇年代の後半には、テレビは豊かさのシンボルとして、いわゆる「三種の神器」(テレビ・洗濯機・冷蔵庫)の筆頭にあげられるようになる。テレビを持つことはステータスでもあった。一九六〇年からはカラーテレビ放送が始まり、一九六四年の東京オリンピックを契機に一気に受信機が普及していく。
 今やテレビの世帯普及率は一〇〇%に近くなり、まるで空気のような存在になっている。むしろ最近ではインターネットの普及にも押されて、若者のテレビ離れが進んでいるとも言われている。
 この間、テレビ放送の制作技術や受信機の完成度も高くなり、テレビの技術は成熟の域に達したかのように思われた。しかし、放送開始から五〇年近く経った二〇〇〇年頃になって、テレビをとり巻く環境が急に変わり始めた。
 一つは全世界的に起こっている「放送方式のデジタル化」である。日本では、今回の震災で大きな被害を受けた東北の三県を除いて、これまでのアナログ方式によるテレビ放送が二〇一一年七月二四日で終了し、完全にデジタル放送に切りかえられた。
 放送のデジタル化のもたらすものは想像以上に大きい。これまでと同じチャンネルのなかでデジタルハイビジョンの高画質放送が楽しめるという直接的な変化だけでなく、データ放送や電子番組表などの新しいサービスが提供され、テレビの使い方が変わる可能性を秘めている。またデジタル化によって、いわゆる「放送と通信の融合」が現実的になり、放送コンテンツの共用化やネットを経由しての放送サービスもできるようになっている。
 テレビをとり巻くもう一つの変化が、「薄型テレビ」へのシフトである。デジタル放送による高精細画像の番組(ハイビジョン)が増えてくるのに連動するように、これまでテレビのディスプレイ装置として長年使われてきたブラウン管(CRT)に代わって、ハイビジョンの表示に適した大画面・薄型のディスプレイ装置としてプラズマ(PDP)や液晶などを用いた薄型テレビが急速に普及してきた。
 テレビの操作方法は、小さな子供からお年寄りまで、知らない人はいないほど私たちの生活に溶け込んでいるが、その一方で、どのようにしてテレビの映像が伝送され映るのかという、その「原理と技術」については、案外知らない人が多いかも知れない。
 そこで今回執筆の機会に恵まれた『図解テレビの仕組み』(講談社ブルーバックス)では、テレビの技術が大きく変化しようとするこのタイミングをとらえ、私たちが日常当たり前のように使用しているテレビの基本の原理や仕組みについて体系的に説明すること、そして、それがデジタル化や薄型化によってどう変わっていくのかを解説することを狙いとしている。
 今日のデジタルテレビのシステムや受信機のつくりは、コンピュータやインターネットの技術を使った、たいへん複雑なものになっている。そのため、「テレビの仕組み」を理解するには、全体を段階的に理解していく方がわかりやすいだろう。そこで、本書ではアナログテレビの仕組みから始まって、デジタルテレビ、薄型テレビへの変化と、それらを実現する原理や技術について順を追って説明している。
 すでにアナログ放送の電波は停止されており、アナログはひと世代前の技術と思われがちであるが、デジタル放送になっても信号の伝送路は同じであり、電波を使って信号を送る技術には、やはりアナログ信号処理の「たくみの技術」が集大成されている。
 デジタルへの完全シフトによって、テレビ放送は通信との融合が加速されていくだろう。その変革は、コンテンツの共有だけでなく、ダウンロードによるタイムシフト視聴や、見たい時に番組を見るオンデマンド視聴など、これまでの放送時間に拘束された視聴スタイルも変えていく可能性を持ち始めた。

2011年9月28日水曜日

ボーイング787 関連本担当者が取材してきました

ニュースなどでご存じの通り、ボーイング787の1号機が全日空に引き渡されました。
その模様を取材してきました。


記念すべき着陸の瞬間。



さて、この機材でぜひ注目していただきたいのは、主翼とエンジンです。主翼は同クラスの767に比べると1割以上広くなっています。翼幅が広いためアスペクト比も大きく、航続性能に優れます。これだけ大きな翼面積をとれるのは、複合素材を主翼に使用したからといえましょう。



エンジンは、ロールスロイスのトレント1000。3軸構成の最新式で、バイパス比が11倍と非常に高く、推力が大きいのに騒音が低いという特徴があります。




ブルーバックスでは、こうした技術をわかりやすく解説するために、787に関する書籍を目下制作中です。787の定期就航にあわせ、11月に出版予定です。


2011年9月20日火曜日

9月の新刊ご紹介

じつはtwitterの公式アカウントもあって、ときどきつぶやいているのですが(担当者の忙しさに反比例してつぶやく感じです)、よかったらこちらもどうぞ。






では今日の本題、9月20日発売のブルーバックス新刊5点のご紹介をさせていただきます。



おいしくて体によい使い方
日本香辛料研究会 編

スパイスにこめられた9000年の知恵!
ピラミッド建設の陰の立て役者ガーリックから、いま大人気の「食べるラー油」まで、そして料理を引き立てる使い方から、体によい隠れた薬理効果まで、スパイスの「小粒でもピリリと辛い」魅力を紹介!








図解 テレビの仕組み
白黒テレビから地上デジタル放送まで
「地デジ」って、何がデジタルなんだろう?
テレビは、撮影・伝送(放送)・受信の最新技術から成り立つ最も身近で高度なテクノロジー・システムです。アナログ放送が終了し、地上波放送もデジタル化された現在、テレビに関するテクノロジーは衛星デジタル、地上デジタル、CATV、ワンセグ、さらにはディスプレイも、液晶、プラズマと多岐にわたっています。本書は、この高度なシステムの全体とそれを構成する技術をその原理から、わかりやすく解説します。


青木則夫





タブレット、スマートフォンからクラウドまで

たくきよしみつ

使いこなせないのは、あなたの責任ではない!
iPadなどのタブレットやスマートフォンなど、次々に出現するデジタルツール。データストレージ、クラウド、SNSなど、多様なパソコン関連サービス。これらを全部使いこなそうとするのは、無駄な労力かもしれません。泥沼にはまりこんで時間を浪費するよりも、さっさと別の道具、別のソフト、別の発想に切り替えたほうがスッキリ解決するのでは? 複雑化するデジタル世界を楽に生き抜くための「使い分け」を提言する一冊。





魔法の光が拓く物質世界の可能性

日本放射光学会 編

ナノ世界がわかれば物質世界の未来が変わる
加速器を使って作られる極端に波長が短く高輝度の光=放射光を使えば、これまで見ることのできなかったナノ世界の物質の振る舞いがわかり、金の磁石、鉄の超伝導、人工光合成、創薬といった新しい物質の開発に大きな威力を発揮する。魔法の光がまったく新しい物質世界の可能性を拓く。





理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬
長沼伸一郎

大胆なイメージ化により、難解な概念を短時間でマスターする!
ベクトル解析、フーリエ変換、複素積分など、理工系学生の前に立ちはだかる数学の「10の難所」をカバー。試験前に途方にくれる幾多の学生を救い、「難解な数学的手法の意味が、目からウロコが落ちるように理解できた」「はじめて腑に落ちた」と絶大な支持を得た伝説の参考書の新書版!





2011年9月6日火曜日

講談社科学出版賞授賞式が行われました

9月5日、東京丸の内の東京會舘で、「2011年度 第27回講談社科学出版賞」授賞式が行われました。講談社ノンフィクション賞(第33回)、講談社エッセイ賞(第27回)との三賞合同授賞式でした。それぞれの受賞作はすでに新聞等で発表されているのでご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、次のとおりです。

科学出版賞
 『冬眠の謎を解く』近藤宣昭(岩波新書)
ノンフィクション賞
 『カニは横に歩く』角岡伸彦(講談社)、『A3』森達也(集英社インターナショナル)
エッセイ賞
 『身体のいいなり』内澤旬子(朝日新聞出版)、『ジーノの家 イタリア10景』内田洋子(文藝春秋)

三賞合同ということもあって、作家、ジャーナリスト、研究者、各版元関係者など、多彩な方々にお集まりいただきました。


賞の贈呈式。左が近藤さん、右が弊社社長です。


今回受賞された方々。左から科学出版賞の近藤さん、
エッセイ賞の内田さんと内澤さん、ノンフィクション賞の森さんと角岡さんです。


ここはブルーバックスのブログですので、科学出版賞授賞式の様子と、選考委員を代表しての池内了先生の選評、受賞作著者・近藤宣昭さんの受賞の言葉をご紹介いたします。


【選評】 冬眠研究の現場報告  池内 了

 本書は著者が長年取り組んできた哺乳類(シマリス)の冬眠研究の一部始終をまとめたもので、著者の研究者としての成長過程とともに、そこで得られた科学的知見がわかりやすく提示されている。試行錯誤しつつ研究を進める研究者の生態報告が科学の考え方・進め方の手本となっているだけでなく、そこで見出された結果を一般的な法則として確立しようとする道筋は、科学がいかに普遍性を獲得していくかを知る手助けとなるに違いない。著者が得た知見はまだ部分であり、哺乳類の冬眠すべてに適用できるかどうかは明らかではないが、部分から全体に至ろうとする科学の歩みが読み取れるだろう。
 実験には失敗がつきものだが、失敗の原因を探って新しい方法を開拓する粘りが必要である。初めは何を意味しているかわからなかった事柄が、後になって重要な示唆を与えていたとはたと気づき、そこから研究が飛躍することもある。長い間実験に取り組むことにより、自然に真実を見分ける目も身についてくる。そんな研究者の辿る道が、実際の研究現場からの報告という形で具体的に展開されており、単なる知識の羅列でないところに本書の魅力がある。
 今、シマリスの冬眠研究から低体温治療や人工冬眠というような応用研究へと結びつくようになっているが、最初は直接の応用が期待できない基礎研究に過ぎなかった。そのような基礎研究があってこそ幅広い応用の道が拓かれるのである。経済論理一辺倒になりつつある学界への警鐘の本としても評価したい。
(いけうち・さとる 総合研究大学院大学教授)



【受賞のことば】 我を忘れて没頭できる時間 近藤宣昭


 全く想像できない出来事とは、今回の受賞のようなことをいうのだろう。受賞は勿論嬉しいのだが、研究を理解されたことが何より嬉しかった。
 受賞対象となった拙著は、一〇年ほど前から構想していた。自分で経験してきた実際の研究生活ではあったが、ふと気がつくと思いもかけないドラマチックな展開になっていたので、何らかの形で残しておきたいと思っていた。いろいろな方々との交流の中で、その思いと岩波書店の出版理念との出会いが待っていた。この賞を頂くことになった大きな要因の一つである。
 もともと私は、他人と似たことをやるのが好きな質(たち)ではないし、定石とか定理とかを暗記して問題を解くのも好みではなかった。でも、黙々と考えに浸れる時間は好きだった。『冬眠の謎を解く』は、このような"質"と"冬眠"との奇妙とも絶妙ともいえる巡り合いによってもたらされたように思う。長年一つのことを追究するのは大変だったろうと良くいわれるが、我を忘れて没頭できる時間は実に楽しい。むしろ、そこで得た感動を読者の方々に素直に文章で伝えることが、不慣れな私にとっては一苦労だった。
 本書には研究のみならずいろいろな思いを織り込んだ。読者の方々に様々な読み方をして頂き、生命のしなやかさを感じてもらえれば幸いである。
 関係者の方々、研究を理解し支援して下さった方々に心より感謝したい。

近藤宣昭(こんどう・のりあき)
1950年、愛媛県今治市生まれ。1973年、徳島大学薬学部卒業。1978年、東京大学大学院薬学研究科博士課程修了、薬学博士。三菱化成(現三菱化学)生命科学研究所主任研究員、財団法人神奈川科学技術アカデミーを経て、現在、玉川大学学術研究所特別研究員。これまでの著書に『冬眠する哺乳類』(共著、東京大学出版会)など。

2011年8月23日火曜日

8月新刊のご紹介

ブルーバックス8月の新刊は18日発売ですが、当ブログ担当者夏休みにつきご案内が遅れてしまいました。スミマセン。

 
絶対君主と無力なしもべ
上出洋介(元・名古屋大学太陽地球環境研究所教授兼所長)

犯人は太陽。「生命の誕生」を可能にし、生きとし生けるものすべてに恵みを与える。──「母なる星」のイメージは、間違いだった! 11年周期で増減する黒点が、苛烈な太陽を演出していた。コロナ質量放出、磁気嵐、高エネルギー粒子線……。絶え間なく繰り出される太陽の攻め手を、地球はどうしのいでいるのか?








iPS細胞とはなにか
万能細胞研究の現在
朝日新聞大阪本社科学医療グループ

生命の神秘に迫る世界競争
人体のどんな組織や臓器をも作り出すことができる万能細胞の実現は、医療に革命をもたらすと期待されている。iPS細胞の発見は、その扉を大きく開いた。しかし同時にそれは、世界規模の研究競争の幕開けでもあった。山中伸弥教授のiPS細胞を中心に、世界の万能細胞研究の現在を見る。





 

なぜAiが必要なのか
海堂 尊・編著
塩谷清司/山本正二/飯野守男/高野英行/長谷川剛・著

Aiの理念と、Aiの真の力
誰にでも一生に一度、平等に行われるべき検査、それが死因検査だ。だが、この国の死因究明の実態はとても貧しい。大切な人の死因がわからない悲しみ、犯罪や医療ミスが介在するのではという疑い。そうした「死因不明」の闇は、医療を、社会を、そして人々の心を歪めていく。この問題を解決する「Ai」の理念を『死因不明社会』で示した海堂尊が改めて提示し、医療最前線で活躍する5人の第一人者とともにAiの真の力を見せつける!

★毎週火曜日夜10時、関西テレビ・フジテレビ系列放送中、いよいよ佳境の「チーム・バチスタ3 アリアドネの弾丸」(海堂尊原作)でもトリックの重要なカギとなるAi(死亡時画像診断)のしくみが一目瞭然でわかります。

2011年7月29日金曜日

ツキとスランプの正体とは?(後編)

ブルーバックス7月刊『人はなぜだまされるのか』著者によるエッセイ「ツキとスランプ」の後編です。
前編はこちら


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 さてそれでは、人間はどうしてツキやスランプを信じる傾向があるのだろうか。進化心理学の観点で説明すれば、法則発見機能が進化の途上で身についたからだとなる。進化心理学者のニコラス・ハンフリーによると、サルには見られない独特の法則発見機能が進化したことが、人間が文明を発達させたひとつの大きな要因だ。そのうえ、その機能が進化したきっかけは、記憶力が弱くなったためであるという。
 チンパンジーの記憶能力は、いくつかの面で人間を上回っている。数秒間だけ見せられた画像を詳細まで覚えているし、複雑なパターンもそのまま丸覚えできる。同じ課題を人間に課すと、とてもできない芸当である。そのかわり人間は、パターンから法則を抽出できるのだ。丸覚えができなくなったので、かわりに、法則を見いだしてそれを覚える機能を身につけたのである。
 人間に進化した法則抽出機能は、当然ながら科学技術が発展する基盤となった。ハンフリーが正しければ、人間は記憶能力の弱体化によって文明を獲得したことになる。なによりも、自然には科学技術に利用可能な法則があったことが、人間にとって幸運であった。
 そして、この法則抽出機能が、じつは「運の流れ」を見いだしてしまう元凶でもあるのだ。ツキやスランプは時系列のパターンである。パターンに法則があれば、その背後に原因が隠れているだろう。成功が続くときはその原因を特定して、さらに成功が続くように工夫するのがよい。失敗が続くときも、その原因を見いだして改善するのがよいのだ。ツキやスランプなどと認知するのは、原因を探る第一歩なのである。
 こうしてみると、法則抽出機能は、科学者だけが身につけている能力ではなく、人間が日常的に発揮している、素朴な能力であると言える。ギャンブルの胴元は、その素朴な能力につけこんでいるのである。
 ギャンブルの時系列パターンには本来、ツキもスランプもない、純粋に偶然の変動なのにもかかわらず、多くの人々がそこに法則を見いだそうとする。加えてその偶然変動には、事後的にはツキやスランプに見える変動があるので、それも一役かっている。成功が続いた次に成功すれば、ツキが続いていると感じるし、失敗すればスランプに転じたと思えるのである。どちらにせよ事後的な説明が可能なのである。
 法則抽出機能は、人間の文明を支えた一方で、文明社会に生まれたギャンブル業者に悪用されていると言える。ほかにもこのようなジレンマの状況になった機能はたくさんある。人間の「愚かさ」は、高度に進化した認知機能ゆえの副作用だったのだ。
 たとえばカルト宗教は、人間の想像機能につけこんで、ありもしない世界観を信じこませるが、その想像はもともと、過去や未来の推測に必要な機能として進化したのである。想像は、過去を反省したり、未来に希望を持ったりするには欠くことができない機能だった。また、壁のしみに幽霊を見るのも同様だ。人を識別しながら協力する生活を大昔に始め、私たちは他者の顔や視線に敏感になった。加えて危機的状況を生き残るために、恐怖感情も発達させた。それが過剰に反応して、壁のしみも恐ろしい顔に見えてしまうのだ。
 心の機能それぞれの進化的な由来をよく認識したうえで、文明社会での利用を考えるべきである。七月発刊の拙書『人はなぜだまされるのか~進化心理学が解き明かす「心」の不思議』(ブルーバックス)により多くの実例が書かれているので、さらなる興味をおもちの方には一読をおすすめする。




石川幹人(いしかわ・まさと)
1959年東京生まれ。1982年東京工業大学理学部卒。企業および国家プロジェクトの研究所をへて、現在、明治大学情報コミュニケーション学部教授。学部・大学院では、生物物理学・心理物理学を学び、企業では人工知能の開発に従事。遺伝子情報処理の研究で博士号(工学)を取得。専門は認知情報論および科学基礎論。著訳書に『心と認知の情報学』(勁草書房)、『入門・マインドサイエンスの思想』(共編著、新曜社)、『ダーウィンの危険な思想』(共訳、青土社)などがある。

(講談社PR誌『本』8月号掲載のエッセイを転載しました)

ツキとスランプの正体とは?(前編)

ギャンブル好きは必見!?
ブルーバックス7月刊『人はなぜだまされるのか』著者によるエッセイを紹介します。講談社PR誌『本』8月号に掲載されたものを2回に分けてお送りします。




ツキとスランプ
石川幹人(明治大学情報コミュニケーション学部教授)


 大学の教員をしている筆者のゼミには、数年にひとりの割合で、ギャンブルを研究テーマにしたいという学生が入ってくる。私の研究分野が心理学であり、人間の心理のなかでも、とくに認知(ものの見方や考え方)を中心に扱っているからだ。
 ギャンブルを研究テーマにしたい学生に、「どうしてギャンブルなの」と動機を聞いてみると、決まって「自分がギャンブルにはまっているから」と訴える。自分の抱えた問題を解決したいので、解決策を求めて心理学を勉強したい。こういう学生はことのほか多い。
 ギャンブルにのめり込んだ者は、一日の「運の流れ」が大事らしい。昔ギャンブルで家計を支えたという自称ギャンブラーの同僚は、ギャンブルに行く日の「賭け」は朝から始めるという。家から出たときにもう、最初に出会う車は右から来るかそれとも左から来るかを「賭ける」のだそうだ。その日の流れを確かめる「賭け」が当たると「今日はツイている」と考え、意気揚々とギャンブルに向かうのだ。「運の流れ」を感じると、「ツイている日はギャンブルをしないと損」と思うようである。
 この話を学生にしたら、重要な試験の朝には、六角鉛筆をころがして金文字ブランドが掘られた面が二回続けて出るまで振って、運を呼び寄せてから試験に向かったと申し出る者がいた。試験はギャンブルに等しいのかと思わず苦笑してしまった。
 もちろん「運の流れ」などない。パチンコにしろ、競馬にしろ、ギャンブルは確率の勝負であり、一回一回の勝ち負けは、まったく偶然に確率にのっとって決まる。偶然に決まるからこそギャンブルなのだ。筆者の統計学の授業ではギャンブルを題材に確率の勉強をさせるくらいである。
 スポーツの分野では、成績が体調と関係するので、調子のよいとき悪いときがあってもおかしくない。しかし、コーネル大学のトーマス・ギロビッチの研究では、バスケットボール選手のフリースローの成績には調子のよし悪しが現れていないことが、統計的に明らかなのにもかかわらず、選手はツキやスランプを訴えていることがわかった。つまり、体調に変化があったのではなく、ギャンブルにおける「運の流れ」の認知と同じような、幻想を抱いていたのである。
 あるとき「運の流れ」を主張する学生に、統計学を勉強したかどうかたずねた。すると学生は、統計学を勉強し、ギャンブルは偶然にもとづくことを「知っている」と答えたのである。「偶然というのは、それまで勝っていようが負けていようが、まったく関係なく決まるということだよ」と改めて説明したが、それでも、「ツキやスランプがある」という信念を曲げなかった。
 偶然と「運の流れ」はたがいに矛盾するのだが、人間は「偶然だという知識」をもちながらも、同時に「ツキを信じる」ことができる動物なのだ。これに似た矛盾を感じたことが、過去にもあった。
 筆者は生物学の研究で博士号の学位をとったので、欧米の生物学研究者と交流する機会がたびたびあった。彼らの多くは、キリスト教の信者であり、生物の進化を知識として知っていると同時に、神による創造を信じてもいた。その点を指摘すると、きまり悪そうに言葉を濁すのである。
 私たち人間の心は、生物進化の過程で生まれてきた。心の中にはたくさんの機能がしまわれているが、生活のうえで必要となった機能がそれぞれ進化し、時代ごとに積み重なったものである。それらの中には、たがいに矛盾する機能もあるのだが、状況におうじてどちらかが働くようになっているので、ふつうは問題がない。生物の実験室で働く心の機能と、教会で働く心の機能は別々なのだ。
 このような、生物進化の枠組みに照らして人間の心理を探る分野があり、「進化心理学」と呼ばれている。人間の本性が成立した経緯を、神を必要とすることなく描写する。一九九〇年代から注目されてきた進化心理学は、人間の行動や認知の傾向性をうまく説明できるうえに、人間がどこまで文明社会の環境に適応できるかも、おおむね予想できる。(つづく

2011年7月22日金曜日

『宇宙は本当にひとつなのか』著者メッセージ

ベストセラー『宇宙は何でできているのか』著者、東京大学数物連携宇宙研究機構(IPMU)機構長である村山斉さんから、読者の皆さんへのメッセージをご紹介します。村山さんのブルーバックス新刊『宇宙は本当にひとつなのか』に込めた思いを感じでてください!


宇宙はわかってくればわかってくるほど、さらに大きな謎が出てきます。この本ではまず、あまりにも大きい宇宙の大きさを少しでも実感できるように、地球から少しずつ離れ、太陽系、銀河、銀河団、と大きなものを見ていきます。そこでまず出会うのが暗黒物質。これがなくては星も銀河も私たちも生まれなかったのです。さらに遠くへ、つまり過去へと遡っていくと、宇宙の膨張を加速して引き裂いている暗黒エネルギーに。これが宇宙の運命を決めています。
 
この暗黒物質を説明するために真剣に議論されている異次元、そして暗黒エネルギーを説明するための多元宇宙。宇宙には目に見える3次元の空間だけでなくさらに異次元の空間があり、しかも宇宙そのものがとてつもない数、試行錯誤でできたのかもしれないというのです。
 
宇宙をわかりたいと飽くなき挑戦を続ける研究者たちの最新の考え方をご紹介します。


村山斉(むらやま・ひとし)

1964年東京生まれ。東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構(IPMU)の 初代機構長、特任教授。米国カリフォルニア大学バークレー校物理教室教授。 1991年、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。東北大学大学院理学研究科物理学科助手、ローレンス・バークレー国立研究所研究員、カリフォルニア大学バークレー校物理学科助教授、准教授を経て、同大学物理学科MacAdams冠教授。米国プリンストン高等研究所メンバー(03~04年)。2007年10月より現職。専門は素粒子物理学。2002年、西宮湯川記念賞受賞。素粒子理論におけるリーダーであり、基礎科学分野における若き指導者の一人でもある。

7月新刊のご案内

7月20日発売、今月の新刊をご紹介いたします。


宇宙は本当にひとつなのか
最新宇宙論入門

村山斉(カリフォルニア大学バークレー校教授、東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構(IMPU)機構長)

最新の理論と実験から迫る新しい宇宙論
宇宙の全体を調べてみると、目に見える物質は5パーセントにも満たなくて、 残りの約96パーセントは正体不明の暗黒物質と暗黒エネルギーだというので す。私たちは、目に見える宇宙こそ宇宙だと思ってきましたが、最近になって それがまったくの間違いであることがわかってきたのです。暗黒物質と暗黒エ ネルギーの正体を探っていくと私たちには目に見えない多くの次元と無数の宇 宙が存在しているのではないかというのです。急展開を見せる宇宙の最前線を ふまえて「宇宙とは何か」を問い直す最新宇宙論入門。 定価861円




人はなぜだまされるのか
進化心理学が解き明かす「心」の不思議

石川幹人(明治大学情報コミュニケーション学部教授)

心の機能は遺伝し、進化する!
壁のシミが幽霊に見えたり、噂話を信じやすかったり、記憶力はチンパンジーに劣ったり……。そんな人間の「愚かさ」は、高度に進化した認知機能ゆえの副作用だった。心の動きを生物進化に基づいて考える今注目の進化心理学の最新知見から、人間特有の心の本質を解き明かす。
定価861円









Excelのイライラ根こそぎ解消術
「思い通りにならない」と「面倒くさい」を克服

長谷川裕行(大阪芸術大学講師)

思い通りにならない原因がわかり、面倒を省くテクニックも身に付く
「Excelを使っているとイライラする」理由は、操作結果が思い通りにならないことや、表計算ソフト独特の便利機能の存在を知らずに面倒な操作をしていることにあります。本書は、思い通りにならないときの原因や、面倒な操作を大幅に省く機能に絞って解説し、Excelを以前より数倍扱いやすくするものです。蓄積していたイライラは払拭され、作業でもたつく状況は激減するはずです。
定価840円

第27回 講談社科学出版賞 受賞作発表!

7月15日(金)、講談社科学出版賞が発表されました。この賞は、自然科学と科学技術をテーマにした一般読者向けの書籍を対象に、内容が正確でかつ広く読者の興味と理解を得られるもの、科学的な視点で今日的問題に切り込んだものの中から、とくに優れた作品に贈られます。

昭和60年(1985年)にスタートし、今年で27回目になります。今回は2010年4月1日から2011年3月31日までに刊行された作品が対象。選考委員は、浅島誠(東京大学名誉教授)、池内了(総合研究大学院大学教授)、西澤潤一(上智大学特任教授)、山根一眞(ノンフィクション作家)、吉永良正(大東文化大学准教授)(以上五十音順)の各氏です。


受賞作

『冬眠の謎を解く』近藤宣昭(岩波新書)




体温を下げて冬をやりすごす動物の奇妙な習性、冬眠。心臓の低温保存から冬眠の世界に入っていった著者は、体内時計にしたがって低温に耐える体に切り替える、驚くべき仕組みを発見する。数倍もの長寿をもたらし、人間にも備わっているという冬眠能力とは何か。相次ぐ研究の意外な展開は、生命の奥深さを物語る。(本書カバーより)

著者紹介 近藤宣昭(こんどう・のりあき)
1950年、愛媛県今治市生まれ。1973年、徳島大学薬学部卒業。1978年、東京大学大学院薬学研究科博士課程修了、薬学博士。三菱化成(現三菱化学)生命科学研究所主任研究員、財団法人神奈川科学技術アカデミーを経て、現在、玉川大学学術研究所特別研究員。これまでの著書に『冬眠する哺乳類』(共著、東京大学出版会)など。




講談社科学出版賞のこれまでの受賞作品一覧はこちら

公式ブログ始めました。

講談社の自然科学新書シリーズ、ブルーバックスの公式ブログを始めました。新刊案内だけでなく、さまざまなコンテンツをアップしていければと思っています。本欄担当者はなんとブログ初心者、手探りでゆるりそろりと進めてまいりますので、どうぞよろしく。